【ビール・ショートショート】 月の綺麗な夜に : ビールの個性から想像した1000字程度のストーリー

月が綺麗な夜に

「海(かい)、用意できたー」
美穂は、年長さんになって、自分で保育園の用意ができるようになってきた兄の海に声をかける。自身は、まだ3歳の弟、陸(りく)の準備で精一杯だ。
返事がない。嫌な予感がする。
「ママ、牛乳飲もうとして、こぼしちゃった……」
申し訳なさそうに、海がやってきた。
「えっー、うそー、さっき飲んだじゃない!」
「また、飲みたくなった……」
「もう!」と頭がクラクラする。ホント、子供たちを朝、保育園に送っていくのは戦争だ、と思う。
「ごめん、ごめん、寝坊しちゃて。明日は手伝うから」と、旦那がネクタイを締めながら、その横をパタパタと通り過ぎる。
いつも子育てを手伝ってくれる優しい旦那だ。世間的にはイクメンと言っていい。だが、最近昇進してからは、帰宅はいつも午前様。出勤ギリギリまで起きれないことが続いていた。だから、旦那に不満なんてないのに……
「もう、みんないい加減にしてよ!」
切れてしまった……
時が止まる。
普段と違う私にポカンと口を空けた旦那。驚きで固まった海と陸。
その瞬間、意識を失った。

目が醒めると、美穂は病院のベットにいた。
「あっ、ママ!目、醒めた?気分はどう?」
旦那が心配そうに美穂の顔を覗き込む。続いて、「ママ、大丈夫?」と海。ベットが背丈より高い陸は、「ママ!ママ!」とピョンピョン跳ねて顔を出しては消えるを繰り返している。
「うん、大丈夫よ……」
「いや、ビックリしたよ。でも、ただの過労だって。良かった」
--過労で、良かった……!?
旦那の言葉に引っかかる。それに気づいたのか、旦那がすかさず付け加えた。
「いや、ごめん。良くはない。手伝ってなくてごめんな……」
美穂は、海と陸の頭を撫でると、気持ちが和らいでいくのを感じた。
「ううん、あなたも忙しいから仕方ないよ。ごめんね。今日は調子が悪くて切れちゃった……みんな、心配させてごめんね」
海と陸に笑顔が戻った。
ふと、窓を見ると、綺麗な月が輝いていた。
「ねえ、月がとても綺麗よ」
旦那と子供たちも窓の外に目を移す。
海と陸が、ホントだー、キレイー、と声を上げる。
「ホントだな。うちのマンションならもっと綺麗に見えるよ」
「そうね。なのに、最近、月を見る余裕もなかったね」
「うん、そうだな」
マンションを買ったとき、海の産まれるのを待ちながら、よく二人で月見をした事を思い出す。
「退院したら、月見しながら、ビールでも飲まないか」と旦那。
旦那も同じことを考えていた。クスッと美穂が笑う。
「俺、なんか面白いこと言った?」
旦那が不思議そうな顔をしている。
ーー暗闇の中にもこんなに綺麗な光がある。
月が綺麗な夜で良かった、と思う。

//////////////////////////////////////////////////

このショートショートの発想のもになったビール
月のキレイな夜に(サッポロビール)

スポンサーリンク
広告ー大
広告ー大

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする