映画「三度目の殺人」 無意識のうちの日常的に行われる命の選別。その理不尽を、ある殺人事件の裁判を通して描き切った傑作!是枝監督恐るべし

映画、観ました。

「三度目の殺人」

強盗殺人事件の容疑者(役所広司)を弁護することになった主人公(福山雅治)。容疑者は30年前にも殺人を行なっており、2度目の殺人。容疑者は犯行を認める自白をしていて、ほぼ死刑は確実。そんな中、主人公は仕事として、減刑に持ち込もうとするが……
容疑者の供述は変わり、被害者の家族も秘密を隠している。真実が全くわからない中、主人公は翻弄される。その様を描きながら、日常のあらゆる場面で選別される命の不自然さを照らし出していく。これこそがこの映画の主題。
我々の日常の中でも司法の現場というのは取り分け、人為的に命の選別が行われる場所である。その現実を、供述がコロコロ変わる容疑者、秘密を持った被害者家族という設定にすることで際立たせている。全く真実がわからないままでも、司法、弁護士の都合で、理不尽に生死が選別されていく。
ただ、これは、司法の現場に限ったことではない。生きる価値のない人間が生き、生きる価値のある人間が傷つき、死んでいく現実。こんな理不尽は我々の日常だ。しかし、生きる価値のない人間というのは誰が決めるのか?人を殺したら、生きる価値がないのか?実は、一歩引いて考えると、それも曖昧である。だとすれば、裁判に限らず、我々は何を持って人を裁くのか?この映画は、命に降りかかる理不尽な判定を巧みな設定と緻密なストーリーで描き切っている。
明確に真実がわからないまま、また、明確な処方箋を示さぬまま、全てが曖昧のまま映画は完結する。だが、その曖昧な結末が残す余韻が凄まじく重い。そう、我々は命の選別に関して結論を持っていないのだ。ただ、自分の目の前の実務として対処しているだけだと気づく。
是枝監督が、原案、脚本、監督を務めた作品だが、あまりの素晴らしさに感嘆してしまった。ストーリーの良さ、設定の巧みさ、脚本のテンポ、画面のカット、どれを取っても秀逸。会話も絶妙で、一言一言が重い。でも、重くなりすぎないように、日常会話にうまく紛れ込ませている。最後にわかる、三度目の殺人の意味もグッとくる。
もちろんカラーの映画だが、全体的に白黒で満たされていて、映画の雰囲気を醸成している。モノトーン感のある映像の中、唯一の色が血の赤。これもうまいなーと思ってしまう。
俳優陣も良かった。特に、役所広司さんが凄く、人間のようで人間感のない設定のキャラを絶妙に演じている。このキャラの不気味さは、羊たちの沈黙のレクター博士を彷彿とさせるほどのインパクト。
テーマ性があり、サスペンスとしても楽しめ、様々な点で秀逸な映画で、是枝監督恐るべしという傑作。こんな話、作ってみたいなー。
勝手な評価:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️(傑作!)

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